身体の柔軟性|身体は柔らかいほどいい?研究から考える柔軟性の本当のところ

「身体の柔軟性は高いほどいい?」
「身体が硬いから、もっとストレッチしないと…」
「前屈で床に手がつかないから、身体が硬い」
「身体は柔らかい方が、ケガをしにくいですよね?」
レッスンをしていると、こんなお話を聞くことがあります。
身体の柔軟性は、運動をするときにも日常生活で身体を動かすときにも関係する、身体の能力のひとつです。
でも実は、研究を見ると、
「身体は柔らかければ柔らかいほどいい」
「身体が硬い=ケガをしやすい」
と、そこまで単純には言えないことが分かっています。
今回は、身体の柔軟性とケガの関係について、最近の研究をもとに分かりやすくご紹介します^^
柔軟性を高めると、身体にはどんな変化がある?
ストレッチは、柔軟性や関節の動く範囲を広げる方法としてよく知られています。
2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、2週間以上継続してストレッチを行うことで、関節の可動域が改善することが報告されています。
また、2025年にストレッチ研究の専門家20人がまとめた国際的なコンセンサスでも、ストレッチは短期的にも長期的にも、関節可動域を広げる方法として推奨されています。
つまり、
では、可動域が広ければ広いほど、身体にとって良いのでしょうか?
そして、身体が柔らかければケガもしにくくなるのでしょうか?
ここは、少し分けて考える必要があります。
「柔らかい=ケガをしにくい」とは限らない
では、身体が柔らかくなれば、ケガもしにくくなるのでしょうか?
ここは少し話が変わります。
2020年に発表されたハムストリング損傷に関するシステマティックレビューでは、78研究、7万人以上のアスリートのデータが検討されました。
その結果、柔軟性・関節の動き・可動域に関する項目だけでは、初めて起こるハムストリング損傷との明確な関係は示されませんでした。
また、2025年の専門家コンセンサスでも、ストレッチを「ケガ全般を予防する方法」として行うことは推奨されていません。
ただし、これは「ストレッチをしても意味がない」ということではありません。
筋肉のケガについては予防につながる可能性も報告されており、
まだ研究が必要な部分もあります。
では、どのくらい柔らかければいい?
ここで大切なのは、「柔らかさの数字」だけをゴールにしないことです。
前屈で床に手がつく。
開脚が大きく開く。
脚が高く上がる。
こうした動きができることも、身体の能力のひとつです。
でも、すべての人が同じ柔軟性を持つ必要はありません。
必要な可動域は、日常生活や行っているスポーツ、仕事などによっても変わります。
そして、もうひとつ大切なのが、
「動く範囲」と「その範囲を使えること」は同じではないということです。
例えば、股関節が大きく動く人でも、その範囲を自分の筋肉でうまくコントロールできるとは限りません。
反対に、ものすごく柔らかくなくても、自分に必要な範囲をスムーズに動かし、安定して使える方もいます。
ピラティスでは「動かしながら使う」
ピラティスのレッスンでも、
背骨や股関節、肩まわりなどを大きく動かしたり、
筋肉を伸ばしたりするエクササイズを行います。
でも、ただ伸ばして終わるわけではありません。
例えば、股関節を大きく動かしながら脚をコントロールしたり、
背骨を一つひとつ動かしたり、腕を動かしながら肩甲骨や体幹を安定させたり。
動く範囲をつくりながら、その範囲で身体を使うことも一緒に練習していきます。
そのため、柔軟性だけでなく、筋力やバランス、身体をコントロールする力など、
いろいろな要素を組み合わせて身体を動かしていきます。
「身体が硬いからピラティスは無理」と思わなくて大丈夫
「身体が硬いんですが、ピラティスできますか?」
これは、実際によくいただくご質問です。
でも、ピラティスを始めるために、最初から身体が柔らかい必要はありません。
今動かせる範囲から身体を動かし、
少しずつ自分に必要な可動域や動き方を身につけていけば大丈夫です。
反対に、もともと身体が柔らかい方にとっても、
さらに柔らかくすることだけが目標ではありません。
今ある可動域をコントロールしながら使うことも、大切な身体づくりのひとつです。
「前屈で床に手がつくか」
「開脚が何度できるか」
だけで、自分の身体の良し悪しを決めなくても大丈夫。
柔らかさを競うのではなく、自分の身体に必要な範囲を、心地よく使えるようにしていく。
そんな視点で身体を動かしてみてください😊
参考文献
Warneke K, et al.Practical recommendations on stretching exercise: A Delphi consensus statement of international research experts.Journal of Sport and Health Science. 2025;14:101067.
Konrad A, et al.Chronic effects of stretching on range of motion with consideration of potential moderating variables: A systematic review with meta-analysis.Journal of Sport and Health Science. 2024;13(2):186–194.
Green B, et al.Recalibrating the risk of hamstring strain injury (HSI): A 2020 systematic review and meta-analysis of risk factors for index and recurrent hamstring strain injury in sport.British Journal of Sports Medicine. 2020;54(18):1081–1088.




コメント